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逆に異方的な空間であれば化学エネルギーがベクトル的な仕事に変換できる(都甲・松本,1996)。
図5−12に示すように、ATPの加水分解反応により、ポテンシャルが時間に依存して変化すると仮定すると、粒子の運動は、一方向のみに限られる。このモデルは周波数に偏りのある非平衡な熱ゆらぎと空間非対象なポテンシャルの2つの条件がそろうと効率よく一方向の運動が取り出せる可能性を示している。

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図5−12 非対称なポテンシャル上を運動するボール(アクチン)(松浦・吉川,1994)

 

生物のように内部の化学エネルギーを使って自発的に方向性のあるマクロな運動を起こす例としての化学モーターの例がある(図5−13)(Yoshikawa,1993)。シャーレに油(ニトロベンゼン)と界面活性剤の水溶液をいれて、アルミ箔性のローターを表面に置くとローターが一方向に回転する。これは、油相と界面活性剤を含んだ水相とを接触させることで、表面表力の不安定性によって起こる界面の自発的な振動運動(マランゴニ効果)によるもので、この場合、運動力を引き起こす駆動力は両相間での界面活性剤の濃度勾配である。図5−14に示すように界面張力が急激な変化を示すために接触角の反転が起こり、その結果界面が運動する。

 

 

 

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